統合生産システムの安全性のためには
統合生産システム(Integrated Manufacturing System)の安全性
統合生産システムでは複数台の機械があり、機械と機械の間で行う作業が対象です。複数台の機械を工程内に設置するだけでは問題は生じませんが、機械と機械の接続により、機械と機械の間に危険源が生じます。そのため、機械と機械の間で人が行う作業を洗い出し、それらの作業を行う際の安全性を確保することが、統合生産システムでは重要です。
統合生産システムの安全性を解説した資料が、いくつかの団体から公開されていますが、一般的に統合生産システムには複雑な制御システムが必要になるということで、制御安全や機能安全に焦点を当てて、高度な制御装置を利用した統合生産システムの事例を扱っています。しかし、そのような資料は電気制御系の設計者や技術者が執筆したものが多く、機械と機械の間に存在する危険源は、ロボットやコンベアなど搬送機械によるものに留まっており、ガード、特に人から危険源を隔離するための距離ガードに特化した事例になっています。
現実の工程では、危険性・有害性のある材料や副資材、あるいは、熱や光などの放射をともなうものが機械と機械の間を移動しているため、距離ガードだけでは適切なリスクアセスメントとリスク低減を行うことができません。これは、設計者・技術者の都合に合わせたIMS(Identified
Material-handling System 特定のマテハンシステム)ともいえ、現実の統合生産システムを考えるためのヒントには繋がりません。単体機械の場合には取り扱う材料や副資材に起因する危険源を考慮して、リスクアセスメントとリスク低減を図りますが、統合生産システムが対象の場合も全く同じということになります。
単体の機械では人と一つの機械の関係だけで良かったですが、統合生産システムでは人と複数台の機械の関係が必要です。人の領域と機械の領域で定まる危険領域を定義つけることが、統合生産システムの安全性を考慮するための第一歩です。もちろん、機械の台数分だけ定義することが必要です。ゆえに、統合生産システムでは単体の機械の場合以上に、意図する使用を明確に定めなければなりません。
次に、人の作業と個々の機械の動作の場所的・時間的な関係をみて、どのような場所でどのような時間において危険状態になるのか確認しながら、人の領域と機械の領域が交わる危険領域として存在しないものを選択し、リスクアセスメントの対象から棄却します。
統合生産システムを稼動させるために必要な運転状態を、運転モードとして割り付けるとともに、統合生産システムに存在する場所的・時間的な危険状態に対し、その運転状態で必要なリスク低減のための安全機能を、安全モードとして定義していきます。単体の機械であれば、運転モードごとにリスク低減のための安全機能を設けても良いですが、統合生産システムでは機械の構成が複雑であることから、運転モードと安全モードを明確に分けなければなりません。全ての運転モードと安全モードが出揃った段階で、運転モードと安全モードのマトリックスを作成し、安全モードによるリスク低減のための安全機能の介入が、全ての運転モードに対し、過不足なく、かつ、効率的に割り付けらているかどうかを確認します。
全ての安全モードを優先性や共通性の観点で層別し、できるだけ系統的になるよう安全モードを構成します。安全モードを系統的に設定することができれば、安全モードはオンセーフスタイルとなり、オンセーフスタイルで機械を制御することが実現できます。オンセーフスタイルで構成される安全回路では、セーフティリレーユニットなどの安全コンポーネントを、系統的な位置関係で接続しなければなりません。
統合生産システムの実現は、システムインテグレータの役割です。
オンセーフスタイルの考え方を身につけておくことが大切です。
2022年06月25日
ぴくはりさーち
代表 保科修一
松川渓谷 雷滝(裏見の滝)